大切な革は、<br>愛情をそそいで育てよう

エイジング大切な革は、
愛情をそそいで育てよう

革は使えば使うほど変化していく素材。
使いはじめた瞬間から使い方や手入れのしかたによって、さまざまな表情を見せてくれる。
そんな革の経年変化を「エイジング」といい、これが革の最大の魅力だといえよう。

2008年発行 「日本の革 1号」より

革は自己表現を
できる素材

エイジングはただ時間が経過し革製品がダレた結果ではありません。やはりオーナーがコンスタントに使用し、育てた結果だと思います。この「育てる」というのは過保護に使うことではなく、そのオーナーの革製品に対する愛情やこだわりではないでしょうか。
僕の場合、通勤に使っている鞄は数年前に尊敬する方からいただいた大切な製品で、慎重に扱っていました。でも以前、満員電車で隣の人の鞄の金具が引っかかって傷を付けられてしまいました。それ以来、満員電車では表面を自分の方に向けて抱えています。
また、ショートブーツは年程前に買ったのですが、その頃は靴の手入れに慣れていませんでした。だから、たまたま自宅にあった黒いクリームで、グレーのブーツを磨いたんですね。つま先に塗った時点で失敗したと思いましたが、洗い流すわけにもいかず、全体を磨いたら偶然こんなに深みのある色になりました。結果的には満足しています。
革は天然素材です。だから使えば使うほど衣料や靴は体型や足の形に馴染んでくるし、鞄や小物は使い方に合わせて変化する。大量生産による同じ表情をした商品が市場に流通している中で、革は自己表現をアレンジできる素材ではないでしょうか。革製品に汗や汚れが染みこんでいくと、その製品が自分の歴史を語っているような気がしてなりません。

日本皮革産業連合会
若生さん

この10年もののジャケットは新品でダメージ加工されたものだった。着ていくうちに体に触れる箇所、間接部分が伸縮して色が変化していくと同時に革が柔らかくなった。

5年近く履いているショートブーツ。元の色はグレーだったが黒いクリームで手入れをしているうちに、このような色になったという。