富田興業さまざまな先進的取り組みにより
革のあるライフスタイルと
サステナブルレザーをいち早く提案
皮革業界をリードする老舗企業がレザーの本質と対峙し
可能性を多様なアプローチで表現。
未利用素材、皮革を価値化し、循環型のものづくりを推進している。
2022年取材
1923年創業の富田興業は老舗ながら先進的な企業として知られる。多様性の時代となった今、シーズントレンドはもちろん、マーケットのニーズや機能性を中心とした付加価値の創造は欠かせない。同社では「サステナブル」にいち早く注目し、プロジェクト化して推進する。
食の副産物である皮と植物由来の副産物であるポマース(搾りかす)を再活用する、独自の革づくり「LEZZA BOTANICA ®」では飲料メーカー 伊藤園とコラボレーション。茶殻に含まれるカテキン成分を皮の鞣しに活用。美しい色合い、豊かな風合いのレザーが生まれた。
これまでの消費に変わる「持続可能な循環経済志向のデザイン」が評価され、2020年度「グッドデザイン賞」を受賞。レザーが主体のプロジェクトとして初の快挙だ。ポリフェノールやカテキンによる抗菌効果は、ウイズコロナ・アフターコロナ時代にマッチ。ワインポマースや茶殻で鞣したレザーは販売も好調で今後はコーヒー、柿渋、りんごなどの構想も練られている。
続いて「LEZZA RESILIENCE PROJECT」を始動。ファッションビジネスのプロを育てる国際ファッション専門職大学との産学協同により、皮革業界における資源ロスの問題を解決すべく、製品化に適さないとされていた等級の皮革「D級レザー」にフォーカス。キズや虫刺されなどの皮の個性を生かし、「デットストック」を「ライフストック」へと昇華。学生たちのフレッシュな感性により、多彩なアイディアを具現化した。
そのひとつ、「牛さんの爪サロン」(牛革を使用した猫用爪とぎ)が、国内最大規模を誇るレザープロダクトコンペティション「ジャパンレザーアワード」2022年度の学生部門最優秀賞を受賞。ステイホームが定着するなか、ジャパンレザーの新しいカテゴリーとして支持を広げていきそうだ。
このほか、農林業への被害軽減のため有害捕獲されたエゾジカなどジビエ革の取り扱いやピッグスキンにも注目が集まる。東京都墨田区で生産されるピッグスキン(豚革)は全国シェアトップ。国内で自給できる数少ない素材だ。墨田区エリアのつくり手たちが受け継ぎ、磨き上げた技術も秀逸。ヨーロッパでは根強い人気があり、かつてビッグメゾンに採用された実績もある。
「食に関する志向・嗜好が多様化していますが、私たちには肉を食べてきた歴史があり、食肉の副産物を無駄にすることなく革づくりを続けてきました。広く理解していただくため、さらなる対話が必要だと感じています。これからも資源を活用する役割、循環型のものづくりの役割を担い、環境問題解決の一助となるよう取り組んでいきたい」と代表取締役社長 富田 常一さん。革のあるライフスタイルを楽しむための素材、分かち合うヒントを次々と提案。同社のチャレンジは止まらない。